カルメン・マキさん、歌手人生50周年に寄せて

今の日本のロックやポップス界隈で、
歌が上手い、声が出るなんて言われている女性ヴォーカリストは、
やっぱ吉田美和とかMisiaなんだろうか。
若手では福原美穂みたいに、ホント上手い歌い手が出て来てるよね。

俺の中での、日本の女性ロックヴォーカリストとなると、
カルメン・マキさん、そして金子マリさん。この二人だけ。
特にカルメン・マキさんは、
俺がバンドをやり始めた頃に最初に聞いた日本の女性ヴォーカリストだから、
脳への書き込みのされ方が半端じゃねぇんだわ。

俺も年が年なので、
マキさんの「時には母のない子のように」はリアルタイムで知っている。
その彼女が寺山修二氏の劇団と深い関わりがあったこと…、
つまり、単なる「ポッと出」の歌手じゃなかったことは後で知った。

「時には…」後のマキさんに再会したのは、俺が16歳の時。
カルメン・マキ&OZという、独特の音楽性とサウンドを持ったバンドの1stアルバムでだった。
1975年、’76年と連続して開催されたワールド・ロック・フェスで、生の演奏にも触れた。

時間の流れ的には前後するけど、後から’71年発表の、
「カルメン・マキ&ブルース・クリエイション」というアルバムを手にして、
あぁ、マキさんこそが、日本のロックヴォーカルの創始者の一人だったんだなぁと再確認したものだ。

「創始者の一人」と言う理由は、ジョー・山中氏が既にいたから。
歌唱力と声量があって、尚且つシャウトのできるヴォーカリストは、
当時の日本には数えるほどしかいなかったのよ。
女性ではマキさんが先駆者で、少し遅れて「下北沢のジャニス」金子マリさんの出現となるわけだ。

で、カルメン・マキさんの歌の話をする。
もちろん上手い。声の厚みも申し分ないし、高音もパワフルに素晴らしく響く。
しかしねぇ、それだけじゃないんだよね。
マキさんの歌には、思想があるのだ。それが歌の力を倍加させているのだ。

ここで、モダンジャズの礎となった天才チャーリー・パーカーの言葉を紹介したい。

音楽は体験であり、思想であり、知恵だ。
もし君がそれを実践しなければ、
君の楽器からは何も生まれないだろう。

マキさんの今の歌唄い達との違いがここにある。
金子マリさんや、浅川マキさんもそうだった様に、
売れるとか売れないじゃなくて、自分の生き様や思想を歌に出来たのがあの人達だったんだ。

そこには、ただ「上手い」とか「声が出る」みたいな安っぽい価値感じゃなくて、
歌い手が声と言う楽器を使って伝える「あの人達自身」があったのだ。
それが「凄味」としてこっちにガンガン届いてたんだと思う。

そのカルメン・マキさんが、デビュー50周年のライヴを各地で開催していた今年。
残念ながら観に、聞きには行けなかったけど、
なんつーか、同じ空気を吸ってる感だけは勝手に感じています。

東京は放射性物質による汚染が酷いから、どこかへ活動拠点を変えませんか?
と、ファンの一人として以前お話したことがあるが、
食べ物に気を付けながら、私はここに骨を埋める事にしましたとの返事を頂いた。

元気で歌い続けて下さいね、マキさん。
またどこかで新しいマキさんにお会いできることを楽しみにしています。   

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