韓国ドラマに見る社会変革の力-2

人権委員会なるものが舞台の「走る調査官」と言うドラマがある。
韓国では低視聴率の記録まで作ったらしく、
その低視聴率の理由は、
ドラマ開始前の謳い文句程の内容ではないとか、
捜査物や人権を扱ったドラマは多いが、それらとの確たる差異がないとか、
なかなかに厳しいものだった。

俺自身はまだすべて観終っていないが、
言われている程出来が悪いとは思わない。
まぁ、それほど韓国には他に優れた作品が多いと言うことなのだろうな。

内容について触れると、
1,2話は、ある会社の労組に属する一人の女性が、
自分に対する労組の上司のセクハラを人権委員会に訴えるところから始まる。
しかしこれは世間の耳目を集める為の作戦で、
実はその上司と二人で協力し、労組への会社側の暴力を含む弾圧を
メディアをも巻き込んで世間に告発していくというもの。

3,4話は、強盗殺人事件の罪を着せられ、
冤罪を訴えて刑務所内で自殺したタイ人労働者と、
彼の共犯者として、してもいない殺人の自白を強要された知的障害境界者がテーマ。
この二人は、共に人権委員会調査官の緻密な調査によって、
強盗殺人事件の冤罪を晴らす事になる。



まだ4話までではあるが、ここまでで主に問題提起されているのは…
・職場内のパワハラ、セクハラ
・権力勾配の内側で起きる弱者への脅迫と弾圧
・外国人労働者への偏見
・知的障害者への偏見
・警察側の先入観を持った自白重視の取り調べ
全てが人権に関わる事で、視聴者にこれらを考えさせる契機を与えている。

日本の内容の薄い映画やドラマに幻滅し、
役者の下手さ加減に呆れかえって、
しばらく前から日本のものは全く観なくなってしまった。

だから最近の日本のドラマがどうなってるかは全く知らないが、
韓国のドラマでは、職場内の陰湿なパワハラ、セクハラや性差別を躊躇無く描き、
現実社会にそれらが存在する事を訴える。
だからそう言う事に対しての民衆の意識改革も早く、
数年~10年程前のドラマと今のを見比べると、韓国社会の変化がよく分かる。

日本て、そういうものが無い体でいるよね。
人々はみな誠実で思いやりがあり、差別なんか身の回りには無いよってな感じでさ。
だから、実際には問題だらけなのにドラマでは取り上げる事も無いし、
取り上げたとしても、思想が無いので、突っ込み不足で中身の薄いものになるだろう。

差別やハラスメント、DV等に関して意識の更新の無い日本は
社会に於けるその実態は韓国内より酷いことが想像できる。
ドラマを制作する表現者は、それらを民衆に開示して
人権意識を刺激するのが重要な仕事の一つではないのかな。

日本の表現者にはそう言う意気込みが無く、
また、民衆もそう言った所謂「重たいモノ」は好まない。
作る側はスポンサーが必要だし、となるとまず売る事を考える。
結果として、人気者を使った万人受けするものや、
或いはまた時の権力側におもねる様な内容のものしか作らない。

繰り返しになるが、
ドラマ制作者(をも含む表現者)は社会の恥部、暗部、歪みを指摘し批判し、
視聴者である民衆側に立ち、権力のなす悪に立ち向かうのが仕事の一つであるはずだ。
しかし日本の場合は、韓国などとは全く逆である。
日本に於いては、ドラマによる社会変革は全く期待できないと言う事になる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメントの入力は終了しました。