似ている様だけど実は似ていないお隣の国、韓国。
料理も似ているようでちょっとずつ違う。
特に肉料理はその種類の多様さで韓国に軍配が上がるだろう。
なかでも「スンデ(순대)」は、日本には類似品すら無い料理の一つだ。
2011年9月22日放送の「韓国人の食卓」で紹介されたのは、
古くから行商人達の口コミで、ついには全国に広がった一地方のスンデ。
京畿道 龍仁市 処仁区 白岩面
(경기도 용인시 처인구 백암면:gyönggido yonginsi chöingu begammyoön)
の名物スンデだ。
韓国には陰暦で行う豊作祈願の「名節(명절:myöngjöl)」の文化が残っている。
この時は四大名節の一つである秋夕(추석:chusök)の祭りがあり、
村をあげて豊穣と福の象徴である豚を一頭を捌き、村人皆で食べるのだと言う。
その時に欠かせない料理がスンデである。
果たしてどんな風に作られるのか。興味津々だ (*´罒`*)
祭りが始まった。
お囃子がにぎやかに辻を練り歩き、村人たちが集まり出す。
豚の解体が始まり、部位ごとに村人に配られている。
後々のスンデ作りの為に、骨と内臓は別に取り分けておく。
俺は豚肉の解体をやった経験があるが、中々体力の要る仕事だ。
切り分けられた肉を受け取る村人。
「前足の人は?」「はい、私で~す」
「後ろ足は何斤※?」「5斤だね」「はい、ありがとう。美味しく頂きます♪」
満面の笑顔で肉を手にする村人。※1斤:600g
村人達への分配が終わって、いよいよスンデ作りが始まった。
男性陣は小腸を洗っている。クルッとひっくり返して薬缶の水をかけて洗う。
小腸は長いから、三人がかりででの作業だ。
ザっと水洗いした後は、粗塩と小麦粉をまぶして強めに揉み込み、洗い流す。
臭みとぬめりを取り除く重要な作業だ。
その間に女性陣は、腸に詰め込む具材の用意。
韓国の人は野菜食いだとは知っていたけれど、それにしても凄い種類だ。
人参、玉ねぎ、白菜。キャベツ、長ネギ、ニラ、ニンニク、生姜。
これらを粗いみじん切りにしていく。これもまた骨の折れる仕事だ。
切った野菜はデカい桶に集められ、そこに叩いたモモ肉を加える。
スンデを淡白で香ばしく仕上げる為だと言う。
更にもち米と麦芽も加え、栄養的にバランスの取れた具材に仕上がって行く。
最後に、これはスンデには絶対欠かせない「シンジ(신지)」が入る。
「シンジ」とは、解体時に採取した血が、血小板の作用でゼリー状に凝固したもの。
香ばしさを出すだけではなく、切り分けられた材料を絡み合わせる役割もある。
シンジそのものの味はレバーに近い。
全体をサックリと混ぜ合わせたら、腸に詰め込んでいく。
ハルモニ達が漏斗と棒を使って、具材を詰め込み始めた。
ワイワイとお喋りをしながら、楽しそうに仕事をしてるねぇ( ̄∇ ̄)v
白岩面のスンデの特徴は、小腸とマクチャンを使うところ。
マクチャンとは大腸の最後の部分で、小腸の2倍の太さがある。
マクチャンに具材を詰めているハルモニは、重くて腕が痛いと言っていた。
具材の詰込みが終わったら、餃子の様に蒸すのではなく、大鍋で煮込む。
味の決め手は煮込む時間だ。煮過ぎても煮足りなくても不可。
経験がものを言う工程だ。
ここまでの作業を一人でやるとなると、とてつもない重労働。
祭りの日に村人が総出で作り、「お疲れさん」と、食べる理由が分かるね。
さて、茹で上がったものを切り分ける作業も一仕事だ。
こちらはマクチャンスンデを切り分けて盛りつけたもの。
マクチャンは脂肪が多く消化吸収力に優れ、噛み応えが絶品の部位なのだそうだ。
ごま油とアミの塩辛のタレをつけて頂く。
ではここで、栄養士さんからの解説をば。
スンデはそれ自体が総合栄養食品であり、優れた健康食品といえます。
「豚はトリカブトを食べても死なない」という言葉があります。
それだけ豚の内臓は解毒能力が優れているという意味です。
内臓を使うスンデは高タンパク食品ですが、よく吸収されます。
そして脂肪は豊富ですが、コレステロールの量は少ないです。
いやいや、正に「医食同源」と言う言葉にピッタリの食べ物じゃあないか♪
そして、ここ白岩面ならではのスンデの食べ方があるという。
茹でた内臓も切り分けて一緒に食べるのだそうだ。
肺、肝臓、腎臓に胃。
特に胃は歯ごたえがあった美味いと言う。日本ではガツと呼ばれている部位だね。
取り分けていた豚骨で濃厚なスープをとり、
スンデと内臓を入れたクッパ(국밥:kuk-pap:汁-ご飯)も振舞われていた。
どの料理も作り手の思いが込められていて、惹かれまくる。
観ていて一緒に食べているような気にもなって来た。
俺が初めてスンデを食したのは20年程前。
当時我が家は韓国食品も扱う商店をやっていて、
仕入れのついでに、試しに、と買ったものだった。
見た目はサラミ。謳い文句は「韓国のソーセージ」。
ところが食べてみて大混乱。
想像していた味とまるで違う。シナモン臭い。
ネットで調べたら、日本向けのはにおい消しに大量のシナモンが入れてあるとの事。
そのシナモンのせいで全く食べる気が失せてしまったのであった。
確かに本場のスンデには独特の香りがあるらしいが、
残念ながら俺はその本物のスンデの香りを知らない。
日本人向けに要らぬ手入れをしていない本場のスンデを食べてみたくなった。
できればあの白岩面の現場でスンデ作りに参加した後で (^^