Be-bopだけどBlues Bobby Broom

Bobby Broomを始めて観て聴いたのは確か1980年頃。
TVの音楽番組で渡辺貞夫氏と共演していた記憶がある。
GRPオールスターズの一員として来日していた時だったはず。

俺より2つ年下の彼はえらく若造に見えた。
ナベサダさんは若手を進んで登用するけど、
なにもこんなノリ一発みたいなヤツを使わなくても…みたいに見ていた。
その時の印象は、当時そこら中にいたファンクっぽいフュージョンギタリスト。
それ以降、彼の事はもう俺の頭の中には無かった。

ところが、それから30年以上たった頃の事。
Peter BernsteinのCDにThelonious Monk曲集があると知って、
youtubeで試し聞きをしようとしたら、そこにBobby Broomの名前を発見。
なんと彼もThelonious Monk曲集を出している事が分かった。

えぇ~っ、あのヘッポコな感じのフュージョンギタリストがぁ?
と、たいして聞きたくも無かったが聞いてみた。
ぶっ飛んだ。

何だろうか、この独特の音世界。
あのモンクの曲を演奏しているから、という理由だけではない。
もちろんモンク独特の不協な和音をちりばめてはいるが、
単音で奏でる旋律がブルースの香りたっぷりのビ・パップなのだ。
そして合間にササッと挟み込むコードやオクターブ奏法での囁きのセンスの良さ。

こんなすごいジャズギタリストに成長していたのか!!と感動し、
彼の事を知りたくなり、ネットで経歴を追ってみた。
そしたらなんと彼はデビュー時からずば抜けた才能と技術が認められていたんだな。
しかもしっかりとした音楽教育も受けているジャズ界の精鋭だったのだ。
あのへなちょこフュージョンギターは、時流に合わせた仮の姿だったのか。

ギターの音質もまたいいんだなぁ。
モンク曲集の時はヘフナー社のジャジカを使っているが、
乾いていながらも暖かみのある音色が、彼の音楽性にピッタリハマっている。

音楽的には実はかなり難しいことをやっているのだが、
彼の演奏にはそれを感じさせない包容力がある。
技術の高さが鼻につく事は多いが、彼にはそれが無い。
ひとつ一つの音に、魂が込められているからだろう。

彼のその音楽性を言葉にするならば、
「言語はモダンジャズだけど、話し方はブルース」
所謂「売れ線」とは無縁の、地に足がしっかりついた演奏家。

今日、2024年1月18日は、彼の63回目の誕生日。

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