偉人を聞く-2 Wes Montgomery

オクターブ奏法。
ジャズ・ギタリストのWes Montgomeryがその第一人者だろう。
ギターの現をまたいで、例えば5弦3フレットの低いドを人差し指で、
3弦5フレットの高いドを小指か薬指で押さえて、
間にある4弦は鳴らないように人差し指の腹で消音する。

この押さえ方で、弦、フレットを移動しながら、
旋律を弾いていくのがオクターブ奏法。
速い旋律を弾きこなすには熟練の技が必要になる。

俺がギターを初めてから1年位経った頃、
楽器店でビートルズのバンド譜を見つけて買った。
その中にはデビュー二作目の”Please Please Me”の譜面もあった。
演奏の解説には
イントロのジョージのギターはウェス・モンゴメリーでお馴染みのオクターブ奏法で…
と書かれていた。

当時の俺にはウェスもオクターブ奏法も全然お馴染みではなく、
弾き方は練習して覚えて、
“Please Please Me”の出だしは弾けるようになったが、
ウェスとの出会いはそれから数年後の事に成る。

ジャズを聴くようになっていた数年後、
初めて手に入れたWes Montgomeryのアルバムは、
“Smokin’ at the Half Note with Wynton Kelly “と言うライヴ・アルバム。
どうせ聞くんだったら、ソロをガンガン弾きまくっているライヴにしようと思ったからだ

実際にライヴ録音だったのはA面の2曲だけだったが、
ギターが上達して来て、ライヴをやるようになり、少し調子づいていた俺は、
その最初の一曲目で完全に叩きのめされてしまった。

“No Blues”
曲の形式は確かにブルース。
しかしウエスがやってることは、所謂ブルース・ギタリストとは全く違う。
即興での旋律の作り方はモダンジャズのそれなのだが、
まず右手での弦の弾き方に驚いた。

レコードの解説によると、ウェスはピックではなく親指のみで弾いていると言う。
それなのにとんでもなく速い旋律を弾く。
そしてあの丸っこい柔らかな音は親指で弾いてるからなのだと、その時分かった。

曲の方は、テーマが終わるとウェスの即興でのソロが始まる。
「怒涛」「独壇場」と言う言葉がピッタリのソロだ。
単音での演奏からやがて例のオクターブ奏法となり、
しまいには和音だけで旋律を紡ぎ出すという物凄い技を披露。
しかもどちらも速弾きを交えているから驚きなのだ。

リズム的に食ったり吐いたり、
意表を突く連符と休符で流れに変化をつけたり、
音はとれたとしても、スウィングしながら真似て弾くのは至難の業。

一番やっかいなのは、和音で旋律を弾く部分だ。
音の聞き取りと和声理論とを合わせて指板の押さえ方が分かっても、
同じ速さで弾くためには物凄い練習量が必要で、
これをぶっつけ本番のライヴで即興でやってるなんて神業と言う他ない。
凄味が極まり過ぎて、ピアノのウィントン・ケリーが演奏をやめる時間帯もある程だ。

24コーラスに渡って続く即興演奏には、
ウェスのギター、いや、ジャズギターの全てが網羅されていて、
この一曲から学んだジャズギタリストは多いと言われている。
ウェスの「大きさ」を知るには恰好の一曲だろう。

45歳で早世してしまうウェスは、
晩年にはポップスのヒット曲を演奏して商業的な成功も手にするが、
音楽家、演奏家としての最高傑作は、
“Smokin’ at the Half Note with Wynton Kelly”の一曲目、
“No Blues”だと、俺は断言する ( ̄∇ ̄)v

ギターを弾かない人でも、凄味は伝わってくるはずだから、
是非一度聞いてみてね♪

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