己未独立宣言書(日本語訳)

今から105年前。
日本により植民地とされていた朝鮮で、1919年の今日、
朝鮮の人達による3.1独立運動の際に発表された、
朝鮮の独立を世界に知らせるために作成された宣言書の日本語訳である。
https://peaceboat.org/wordpress/wp-content/uploads/2019/01/info_20190301_sengen.pdf

【宣言書】
わたしたちは、わたしたちの国である朝鮮国が独立国であること、また朝鮮人が自由な人間であるこ
とを宣言する。このことを世界の人びとに伝え、人類が平等であるということの大切さを明らかにし、
後々までこのことを教え、民族が自分たちで自分たちのことを決めていくという当たり前の権利を持ち
続ける。5000 年の歴史を持つわたしたちは、このことを宣言し、2000 万人の一人ひとりが心を一つに
して、これから永遠に続いていくはずの、わたしたち民族の自由な発展のために、そのことを訴える。
そのことは、いま、世界の人びとが、正しいと考えていることの実現のために世の中を変えようとして
いる、その動きをともに進めていこうという訴えでもある。

このことは、これは自然にあるべき秩序としての天が命じることであり、時代の動きにしたがうもの

である。また、すべての人類がともに生きていく権利のための活動である。たとえ神であっても、これ
をやめさせることはできない。わたしたち朝鮮人は、時代遅れとなっていたはずの侵略主義や強権主義
のせいで、他の民族の支配を受けるというこれまでにない経験をすることになった。自由が認められな
い苦しみを味わって 10 年が過ぎた。支配者たちはわたしたちの生きる権利をさまざまな形で奪った。
そのことは、わたしたちの心を苦しめ、文化や芸術の発展の妨げとなった。民族として誇りに思い大切
にしていたこと、栄えある輝きが、徹底して破壊され、痛めつけられた。そして、わたしたちは世界の
文化に貢献することもできないようになってしまった。

これまでおさえつけられて表に出せなかったこの思いを世界の人びとに知らせ、いまの苦しみから抜

け出して、危険や恐れを取り除くためには、押しつぶされて消えてしまった、民族として大切にして来
た心と、国家としての正しいあり方を、奮い起こし復活させ、一人ひとりがそれぞれ人間として正しく
成長していかなければならない。次世代を担う若者に、いまの状況をそのままとしていくことはできな
いのであり、わたしたちの子どもや孫たちが幸せに暮らせるようにするためには、まず、民族の独立を
しっかりとしたものとしなければならない。2000 万人が決意を固くしてそれを刀とし、人類がみな正し
いと考え大切にしていること、そして時代を進めようとする心をもって正義の軍隊とし、人道を武器と
して、身を守り、進んでいけば、強大な権力に負けることはないし、どんな難しい目標であってもなし
とげられないはずがない。

日本は、朝鮮との開国の条約を丙子年〔1876 年〕に結び、その後も様々な条約を結んだが、そこに書

かれた約束〔朝鮮を自主独立の国にすることなど〕を破ってきた。しかし、そのことをわたしたちは、
いま非難しようとは思わない。日本の学者たちは学校の授業で学生を前にして、政治家は演説や会議の
場で、わたしたちが先祖代々受け継ぎ行ってきた仕事や生活を遅れたものと馬鹿にし、わたしたちのこ
とを、文化を持たない民族のように扱おうとしている。彼らは征服者の位置にいることを楽しみ喜んで
いる。わたしたちは、彼らが、わたしたちの作り上げてきた社会の基礎とこれまで受け継いできた民族
の大切な歴史や文化の財産とを、馬鹿にして見下しているからといって、そのことを責めようとはしな
い。わたしたちは、自分たち自身をはげまし、自分たち自身を立派で確かな存在にしていこうとしてい
ることに忙しいのであって、ほかの人をあれこれ恨む暇はない。いまこの時を大切にし、急いでいるわ
たしたちは、かつての過ちをあれこれ問題にして批判する暇はない。いま、わたしたちが行わなければ
ならないのは、よりよい自分を作り上げていくことだけである。他人を怖がらせたり、攻撃したりする
のではなしに、自ら信じるところにしたがって、わたしたちは自分たち自身の新しい運命を切り開こう
としているのである。決して、昔の恨みや、一時的な感情で、他の人のことをねたんだり、追い出そう
としたりするわけではない。古い考え方を持つ古い人びとが力を握っていて、そのなかで手柄を立てよ
うとした日本の政治家たちのせいで、ひどい目にあっていて、不自然で道理にかなっていないことが行
われている現在のこの状況を、本来あるべき状態にして、当たり前の道理にかなった世の中にしようと
いうだけである。

もともと、日本と韓国〔大韓帝国〕との併合は、民族の望みとして行われたのではない。そのために、

威圧的で、差別・不平等な政治が行われている。支配者はいいかげんなごまかしの統計数字を持ち出し
て自分たちが行う支配が立派なことであるかのよういっている。しかしそれらのことは、二つの民族の
間に深い溝を作ってしまい、互いの反発を強めて、仲良く付き合うことができないようにししていると
いうのが今の状況である。きっぱりと、これまでの間違った政治をやめて、正しい理解と心の触れあい
に基づいた、新しい友好の関係を作り出していくことが、わたしたちと彼らとの不幸な関係をなくし、
幸せをつかむ近道であるということを、はっきりと認めなければならない。

また、怒りと不満をもっている、2000 万の人びとを、力でおどして押さえつけることでは、東アジア

の永遠の平和は保証されないし、それどころか、東アジアの安定させる際の柱になるはずの中国人の間
で、日本人への恐れや疑いをますます強めるであろう。その結果、東アジアの国々は共倒れとなり、滅
亡してしまうという悲しい運命をたどることになろう。いま、わが朝鮮を独立させることは、朝鮮人が
当然、得られるはずの繁栄を得るというだけではなく、行うべきではない政治を行い、道義を見失った
日本を正しい道に連れ戻して、東アジアをささえるための役割を果たせようということであり、同時に、
そのことによって中国が感じている不安や恐怖をなくさせようとするためでもある。つまり、朝鮮の独
立はつまらない感情から求めているわけではないのである。

ああ、いま目の前には、新たな世界が開かれようとしている。武力をもって人びとを押さえつける時

代はもう終わりである。これまでの歴史のなかで、絶えることなしにずっと、磨かれ、大切に育てられ
てきた、人間を大切にする精神は、まさに新しい文明の新しい文明の希望の光として、人類の歴史を照
らすことになる。新しい春が世界にめぐってきたのであり、すべてのものがよみがえるのである。酷く
寒いなかで、息をひそめ土の中に閉じ込められる時期もあるが、再び暖かな春風が、お互いがつながっ
ていく時期がくることもある。いま、世の中は再び、そうした時代を開きつつある。そのような世界の
変化の動きに合わせて進んでいこうとしているわたしたちは、そうであるからこそ、ためらうことなく
自由のための権利を守り、生きる楽しみを受け入れよう。そして、われわれがすでにもっている、知恵
や工夫の力を発揮して、広い世界にわたしたちの優れた民族的な個性を花開かせよう。

わたしたちはここに奮い立つ。良心はわれわれとともにあり、真理はわれわれとともに進んでいる。

老人も若者も男も女も、暗い気持ちを捨てて、この世の中に生きているすべてのものとともに、喜びを
再びよみがえらせよう。先祖たちの魂はわたしたちのことを密かに助けてくれているし、全世界の動き
はわたしたちを外側で守っている。その実行はすでに成功を約束している。わたしたちは、ただひたす
ら前に見える光に向かって、進むだけである。

公約三章

一、今日われわれのこの拳は、正義、人道、生存、身分が保障され、栄えていくための民族的要求、す
なわち自由の精神を発揮するものであって、決して排他的感情にそれてはならない。
一、最後の一人まで、最後の一刻まで、民族の正当なる意志をこころよく主張せよ。
一、一切の行動はもっとも秩序を尊重し、われわれの主張と態度をしてあくまで光明正大にせよ。
朝鮮建国四千二百五十二年三月一日

朝鮮民族代表

孫秉熙 吉善宙 李弼柱 白龍城 金完圭 金秉祚 金昌俊 權東鎭 權秉悳 羅龍煥 羅仁協 梁甸伯 梁漢
默 劉如大 李甲成 李明龍 李昇薰 李鍾勳 李鍾一 林礼煥 朴準承 朴熙道 朴東完 申洪植 申錫九 吳世
昌 吳華英 鄭春洙 崔聖模 崔 麟 韓龍雲 洪秉箕 洪基兆

※上記の「宣言書」の日本語訳は、朴慶植『三・一独立運動』(平凡社、1976 年)所収の日本語訳ほか
を参照し、3・1 独立運動 100 周年キャンペーン実行委員会によって行われました。わかりやすい日本
語にするためにある程度の語を補ったり、文脈から意味を考えてやさしい語をあえて用いたりしていま
す。

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