小手先と本物

日本人のジャズ歌手で好きな人は誰か?と問われたら、
俺は迷わずに中本マリさんと答える。
声質が好きだし、声量があって、もちろん音程もしっかりしている。

そして何より個々の歌手が身に着けている「歌い」の部分で、
マリさんは個性的であり、自信に満ちいてる。
歌い出しの一声で「あの人だ」と分かる歌手はそういない。

レコードでしか聞けなかったマリさんの歌を
テレビで映像とともに聞けるようになった頃は、
女性ジャズヴォーカルがテレビやラジオにやたら出まくると言う、
まったく訳の分からん時期でもあった。

阿川なんとかや、真梨邑某等々、
オッサンに媚びを売って出番を勝ち取る様な、
「小手先だけのジャズ」を歌う歌手が持て囃されていた。
しかしマリさんはそれらとは一線を画した「本物」の歌い手。

生演奏で共演者である楽器奏者と丁々発止のやりとりを、
前もって編曲したのではなく即興で出来るのが本物の証拠。
しかもマリさんのそれは完成度が高い。

中本マリ。
ジャンルを超えて。もっと知られていい歌手だと思うのだが、
日本ではどうも本物が好かれない様だ。
本日3月26日が誕生日で、77歳になった中本マリさん。

昨年2月に町田のNica’sで歌っていた姿をyoutubeで拝見したが、
相変わらずの豊かな声量と軽妙なスウィング感。
「小手先」とは対極にある、ますます重厚さを増した「歌い」。
「マガイモノ」には無い圧倒的な説得力が、本物にはある。
マリさんにはもっともっと本物の歌を歌い続けて欲しい。

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