韓国のドキュメンタリー番組が好きで、アレコレ探して観ていた。
ある日、韓国人の日々の暮らしの中の「食」を題材にした、
‘한국인의 밥상’(韓国人の食卓)という番組に出会った。
進行役はベテラン俳優の최불암 씨(チェ・プラムさん)。
韓国各地を回りながら、その地域で昔から食べられている料理、
朝鮮時代から続く伝統料理、市場や食堂の人気料理などを、
その土地土地の農や、海・山の暮らしを交えながら紹介してくれる。
韓国の生きた食文化を知るにはうってつけの番組だ。
その記念すべき第一回目の放送は、2011年1月6日。
‘정에 취하고 맛에 반하다 – 거제시 겨울 대구’
「情に酔い、味に惚れる – 巨済市冬のタラ」という題で、
人工放流事業によって漁場が復活しつつある真鱈を取り上げていた。
番組の中で最も気になったのは‘약대구’(ヤクテグ)という食べ物。
一見真鱈を干しただけのようにも見えるが…
こんな風に腹がパンパンに膨れたものも干されている。
こいつがどうやら「ヤクテグ」らしいのだ。
「ヤクテグ」と言うからには「薬」が絡んでいるはずだ。
栄養価が高かったり、何か効能がある食べ物に違いない。
ハルモニによる作り方解説が始まった。
まずは内臓の除去だ。鰓を切りとりながら…
一緒に内臓も取り出す。ただし腹の中の卵だけは傷つけないように残す。
ここが重要。
卵を傷つけず、内臓だけスッと取り出すには、勘とコツが要る。
で、とった鰓や内臓の一部は棄てない。
叩いて塩辛にする。
韓国の人達は魚や肉の食べ方を知っている。ほとんど棄てずに利用するもんね。
真鱈の頭だってカリッカリに干して、スープの出汁とりに使うしね。
食に関しても韓国から教わる事は多いよ。
さて、いよいよヤクテグ作りだ。
鰓と内臓をとった鱈を流水できれいに洗ってから、
卵の残ったお腹から鰓のあった部分にかけて粗塩を詰めていく。
ハルモニは真鱈のデカい口からも塩を入れていた。
十分に塩を詰め込んだら、最後は「干し」の作業だ。
ハルモニは自分で藁をよって縄を作っていた。
手際がいい。熟練の技だね。
ビニールの紐じゃなく藁をよっているところがいいね。
出来上がった縄で、器用に真鱈をくくっていく。
吊った後で中から卵が漏れ出さない様に、縄で肛門に栓をしていた。
そして最後に真鱈をくくった縄を軒下の金具にひっかけ、吊るし作業は終了だ。
この状態で冬の日光と冷たい風に当てながら、凍ったり溶けたりを繰り返し、3~4か月干せば完成。
残念ながら完成品の姿は番組の映像にはなかったが、
韓国人ブロガーのサイトにあった写真を見たら、
外側が黒い薄皮に覆われた、サーモンピンクのデカい魚卵だった。
薬が手に入りにくかった時代、
栄養価の高い食べ物として、薬代わりに利用されたので、
薬大口:약대구:yak-te-guと呼ばれるようになったのだそうだ。
天日干しによって栄養価を凝縮させ、
陽光の力でアミノ酸も増え旨味が増す。
人が手作りしたものを自然の力を借りて完成に至らしめる。
確かな効能があったからこそ、昔からのこのやり方が今に伝わっているんだろうね。
医食同源の韓国食文化に건배~♪”( ^-^)/且☆且\(^-^ )”