説教オヤジの文化施設訪問

これは、2012年の夏に生まれ育った函館に旅した時の話し。
FBの「思い出」に出てきて、読んでみたら面白かったのでこっちで紹介するね( ̄∀ ̄)

昔看板取り付け工事に来たことはあったが、中に入るのは初めての北方民族資料館。
建物の名前通り、北方に暮らすアイヌをはじめとした先住民の、
生活に密着した道具などが数多く収蔵展示されている所だ。
今は丁度アイヌの家屋であるchiseの模型の展示期間中でもあった。


玄関を入って受付に向かうと、まず左手にアイヌ彫刻家による木彫りの作品、
アイヌ音楽家のCD等が展示販売されているガラスケースがあるのが目に入る。
覗いてみると、独特の美しいアイヌ文様の彫刻が施されたお盆や皿と一緒に、
安東ウメ子さん、OKIさんのCDが並んでいる。
しかし、残念なことに、先日発売なったばかりのアレがないではないか!!

早速受付にいた女性を呼び、「marewrewのCDがないようだけど?」と尋ねてみた。
するとその女性、「え…、marewrewですか?…」と鈍い反応。
「ほら、そこにあるCDのOKIさんとか安東さんとも一緒にやってる…」と言うと、
かぶせるように「あぁ~!!、コーラスの♪」と、少し繋がった感じ。

「コーラスの、って言うか、女性4人のヴォーカルグループね。
この間新譜が出たんですよ。初のフルアルバムが」
「あぁ、そうなんですか」
「そうなんですよ。『もっといて、ひっそりね。』ってCD、ここにも置かなくちゃ」
「あ、わかりました」
と、さり気ない強要を済ませたところで展示室へ向かう。

入って最初に目につくのがアイヌ絵のタペストリー風展示物。
アイヌの生活、風俗の様々な場面を描いたものだが、それを見ていると、
「ほーい、いらっしゃいませ。今はアイヌ関係の展示をしています」と、
小脇に資料らしき書類の束を大量に抱えた、髪の毛の被り物をしたおっちゃんが、俺の隣に現れた。

俺は前々からアイヌ文化やアイヌのルーツ、アイヌと縄文文化の繋がり等に興味があり、
北海道・東北のアイヌ語地名などとも併せて自分なりに勉強していたので、
博物館などにいる、こういった「教えたがり」の人の講釈はあまりありがたくないのだ。
おそらく俺の知っていること以上のものは聞けないだろうという確信があるから。


解説が始まったが、悪い予感はあっけなく的中。
俺が「アイヌ語地名に昔から興味があって、山田秀三さんとか知里さんの本で勉強し云々…」
と言っているのも関わらず、
「え~、北海道の地名は、その75%がアイヌ語地名なんです。ほとんどがそうだと言っていいですね」

「はぁ…」と気のない返事で応じるものの、相手はひるまず、
「本州から来た人は、みんなさっぱり意味がわからない、と言いますけど、
そりゃそうだ、アイヌ語だもの、むハハハハハッ♪」

あ~、なるほど…、このおっちゃん、こっちの反応なんかお構いなしに、
何があっても段取り通り進めようってわけだな、とこっちが気が付く間もなく、
「北海道の地名にはナイが付くものが多い。次はベツ。ま、ペツともいいますがね。ハハハハッ♪」と、
えらい初歩的な話を気持ちの入っていない笑いで締めくくられ、俺のイライラ度は増すばかり。

俺が場所を移動すると、ピタッと寄り添ってついてきて、
「この絵の、この漆塗りの器。これは日本から入ったもので、
アイヌ文化には日本から入ったものが沢山あるんですねぇ」ときた。
この文化に上下関係をつけたがるような話しぶりが癇に障って、俺は耐えきれず、
「アイヌから日本に入ったものも沢山ありますよ。
そういう風に、片側からの流れしか解説しないのはおかしいな」とおっちゃん批判。
するとおっちゃん、「あ、そうすか、ハハハハッ♪」出た!! 気持ちの入らない笑い♪

もー、うっせぇ、このオヤジ、とか思いながら場所移動。
今度は松浦武四郎制作の北海道、千島列島、樺太を網羅した地図の前に来た。当然、おっちゃんも。
したら早速始まった。
「この地図のここ、北方領土ってね。昔はここまで(手で示して)が日本の領土。
樺太は南半分が日本の領土で…」

俺はまたしても耐えきれず、
また、それまで端々に見せるアイヌ文化を下に見るおっちゃんの態度が気に食わず、
ここまでで話を無理くり遮って、
「北方領土だ、南樺太だって言うけど、本来はアイヌやその他の先住民の生活の場だったわけで、
日本が都合よくアイヌを日本人にしてしまって、だからそこは日本の土地である、とやっただけで、
元々は日本の土地でもなんでもない。
だいたい、今、北方領土の問題が語られるときに、
何故アイヌのことが全く触れられないのか? おかしいでしょ。ふざけるな!! って感じ」
と声のボリューム上げ気味でやっちまったもんだからさぁ大変。

「教えたがり」のおっちゃんは、「じゃ、ごゆっくり♪ ハハハハハハハハッ♪」と、
またしても気持ちの入らない笑いを残し、木の枝でつつかれたザリガニのように、
ササササッと素早く後ずさりして、どこかへ消えて行ったのだった。

その後はゆっくりと落ち着いて各展示室を見学させていただいたが、
中でも「ikupasuy」と呼ばれる、kamuyにお酒をささげるときに使う道具の展示には圧倒された。
この道具は各家々で代々受け継がれて使用するもので、それぞれが全く異なるデザインで彫刻されている。一つ一つのikupasuyにその家の家業の特徴、その家に代々伝わる不思議な言い伝えなどが、
見事な表現力で彫りだされ、それぞれが強い存在感を持っている。

このikupasuyの展示を見れただけでも、ここにきた甲斐があったというもの。
「教えたがり」おっちゃんとの楽しい攻防も加味すれば、
北方民族資料館見学は相当ポイントが高い( ̄∀ ̄)V
さ、というわけで、これにて初めての北方民族資料館見学レポートを終わります。

へば、まだにし~(@^^)/~~~

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