先住民アイヌ民族の文化にふれる旅

道民が先住民族であるアイヌの人達の文化を知ろうとしたら、
まず一番身近にあるのは、道内各地の地名になっているアイヌ語じゃないかな。
市町村合併なんかで消えてしまったアイヌ語地名は多いけど、
それでも北海道の地名のほとんどはアイヌ語が元になっているといっていい。

でねぇ、アイヌ語地名ってのは、その地形を表したり、
自分達の生活との関わりを表したりしたものが多いんだよね。
だから地名から、北海道がアイヌモシリだった頃の暮らしをうかがい知る事も出来る。
この時の旅の目的地は、アイヌ民族の聖地とも言われている二風谷村だったけど、
途中で特徴的なアイヌ語地名のつけられた場所にも立ち寄ってみた。

生活密着のアイヌ語地名
まずは、道南長万部町の北東に位置する静狩から。
静狩の地名の元のアイヌ語は「shir-tukari(山の・手前)」で、
山の手前ならどこでもその地名なのかといえばそうではなくて、
あえてそう名付けた理由があるんだよね、これが。

この辺りは長万部側からズーッと砂浜が続いていて、そこを歩いて通行できたのに、
写真の様に海岸に張り出した静狩の山々によって砂浜が断ち切られてしまって、
そこで海岸の通行が断ち切られてしまう土地だから、そういう地名にしたんだって。
今で言ったら交通標識みたいな地名だったんだねぇ( ̄∇ ̄)v
※ちなみに、アイヌ語地名が数多く残る東北の下北半島には、同じ地形で同じ地名の場所がある。
「尻労」と書いて「しつかり」。アイヌ民族が住んでいた証だね。

登別の市街地にあるのは「hunbe-sapa(鯨の・頭)」と呼ばれる小高い丘。
軟石採掘で形はかなり変わってしまったらしいが、
それでも向かって横になっている鯨の雰囲気はある。
ここはアイヌ民族に伝わる鯨伝説の舞台でもあり、先端部では神祭りも行われたそうだよ。

登別の市街地には、アイヌ民族の天才言語学者・知里真志保氏の碑が建てられている。
碑には、氏の姉で、19歳で亡くなった知里幸恵さんが著わした
「アイヌ神謡集」の中の一篇が刻まれている。

知里真志保博士は、ただのアイヌ語研究者としてではなく、
日本におけるアイヌ民族蔑視に抗する形で、いくつかの著作を遺している。
今はそれを「アイヌ語入門」や「地名アイヌ語研究」で読む事が出来る。

どこかにアイヌ民族蔑視の感覚を持ち続けていた日本人研究者達。
その者達への痛烈な批判が書かれた著作。是非ご一読を( ̄∇ ̄)v

独特の空気感だった二風谷村
今は「日高振興局沙流郡平取町」の字地名になってしまった二風谷。
地名の由来は定かではなくなってしまっているけど、ここはアイヌ文化伝承の貴重な場所。
アイヌ民族を先住民と認めなかった差別社会である日本に於いて、
アイヌ民族の立場向上を願い、国会議員となった萱野茂氏が生まれ育った土地でもある。

二風谷アイヌ文化博物館敷地内にある「chise(家)」と「pu(倉庫)」

俺が二風谷村に入ったのはこの時が初めてで、
「アイヌ民族の聖地」と聞いていたからかも知れないんだけど、
何か独特の空気が流れている事に気が付いた。

それは、散々差別的な仕打ちを経験して来た人達の、
他所から来た人は警戒はしつつ、生きる為に観光産業にも参画しながら、
しかし、「暮らしの為に物は売るが、心までは売らん」という、
魂のバリアみたいなものだったのかも知れないなぁ。

二風谷アイヌ文化博物館敷地内にあるヌササン(アイヌ民族の祭壇)

さて、その二風谷には、民芸品店がいくつかあって、
なかでも俺が言ってみたかったのは「高野民芸店」だった。
東京出身の、アイヌ民族ではない高野繁廣氏の、
修行によってアイヌの伝統を受け継いだ作品を見てみたかったのだ。

目にした作品はもう見事と言うほかなくて、見ているだけで泣けてきちゃうのよね。
高野さんは、精巧な彫刻が施された数万円もするマキリ(小刀)を触らせてくれたり、
自分がアイヌ彫刻の職人になったいきさつなどを話してくれたりもした。

いや~、懐具合に余裕があったら是非ともマキリを購入したいとこだったんだけど、
高野さんお勧めの、トルコ石を配したニパポ(木の器)を一つ頂き、店を後にした。

高野さんの
「ポテチでも何でも入れて、どんどん使って下さい。器は使ってこそ魂がこもるから」
と言う言葉が印象的だったなぁ。
でも、もったいなくてまだ一度も使ってません(^^;

二風谷には樹齢250年のナラの巨木があったり、
やっぱりなにか神聖なものを感じさせられる土地だった。

あ、写真とかは無いんだけど、この時は二風谷ファミリーランドのコテージに宿泊。
隣接するびらとり温泉内のレストランで食べた、びらとり牛のステーキ丼は絶品だったよ。
山ワサビと醤油ダレのコンビネーションにもやられたね( ̄∇ ̄)v

あぁ…、二風谷はまた是非行ってみたいところだなぁ。
高野さんはお元気だろうか。

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